
猛暑が続く日本の夏。高齢者にとっては、体力の低下や食欲不振によって夏バテのリスクが高まる季節です。
「最近、おばあちゃんがあまり食べたがらない…」「冷たいものばかり食べて栄養が心配」そんな声をよく耳にしませんか?
実は、ちょっとした食材選びや調理法の工夫で、高齢者の夏バテはぐっと予防できるんです。
高齢者は代謝や消化機能が若年層より落ちているため、栄養バランスを考えた「食べやすい夏メニュー」が効果的とされています。
この記事では、「高齢者の夏バテを防ぐための食べ物・栄養の知識」と「毎日の食卓に取り入れやすい具体的な献立例」をご紹介します。
夏の暑さに負けず、元気に過ごすためのヒントを見つけていきましょう!
なぜ高齢者は夏バテしやすいのか?

加齢による体温調節機能の低下
年をとると、体温をうまく調節する力が弱くなってきます。
暑いときに体の中に熱がこもっても、それを外に逃がす力が弱くなってしまうのです。
若い人なら汗をかいたり、血管が広がったりして体温を調整できますが、高齢になるとその働きが鈍くなり、「暑い」と感じにくくなる人もいます。
そのため、気づかないうちに熱が体の中にたまり、体がだるくなったり、頭がぼーっとしたり、夏バテの原因になってしまいます。
食欲不振と水分不足の関係
暑いと食欲がなくなりやすいですが、特に高齢者はその影響を受けやすいです。
汗をたくさんかくと体の水分が失われ、胃や腸の働きも鈍くなって食欲がわきません。
さらに、口の中が乾いてくると、食べ物の味も感じにくくなってしまいます。
「なんとなく食べたくない」と思って、お茶漬けだけで済ませてしまうと、栄養が足りずにさらに元気がなくなってしまうという悪循環に…。
水分補給をこまめにしながら、食べやすくて栄養のあるものを少しずつでもとる工夫が大切です。
基礎代謝の低下と栄養吸収の問題
高齢になると、体を動かさなくても消費されるエネルギー(=基礎代謝)が減ってしまいます。
筋肉が減ってしまうことや、内臓の働きが弱くなることが原因です。
そのため、昔と同じような量の食事をしていても、必要な栄養が体にうまく吸収されないことが多くなります。
特に、筋肉を作るために必要なたんぱく質が不足すると、体力が落ちてしまい、ちょっとしたことで疲れやすくなったり、転びやすくなったりします。
だからこそ、栄養バランスの取れた食事をしっかり意識し、「食べたつもり」ではなく「体に必要な栄養が届いているか」を考えることがとても大切なのです。
高齢者の夏バテ対策に効果的な栄養素とは?

たんぱく質で体力維持
高齢者にとって大切なのが「たんぱく質」です。たんぱく質は、筋肉や内臓、血液をつくる材料。
とくに夏は汗をかいて体力が落ちやすいため、たんぱく質が不足すると体が元気をなくしてしまいます。
「お肉は重くて…」という場合でも、豆腐、納豆、卵、魚などのやわらかくて消化に良いたんぱく源を選べば、無理なく取り入れられます。
少しずつでも毎日たんぱく質をとることで、筋肉が落ちにくくなり、元気に夏を過ごす力になります。
ビタミンB群で疲労回復をサポート
ビタミンB群は、体のエネルギーを作るのを助ける栄養素です。
夏は疲れがたまりやすいため、ビタミンB群が不足すると「だるい」「やる気が出ない」といった夏バテ症状が出やすくなります。
ビタミンB1は豚肉や玄米、ビタミンB2は卵やレバー、ビタミンB6は魚やバナナに多く含まれています。
さまざまな食品に含まれているので、偏らずいろいろな食材をバランスよくとることがポイントです。
「疲れが抜けない」と感じたときは、ビタミンB群を意識してみましょう。
カリウム・マグネシウムで水分バランスを整える
夏は汗と一緒に、体に大切なミネラルも失われがちです。
中でも「カリウム」と「マグネシウム」は、水分バランスを保ち、むくみや筋肉のけいれんを防ぐのに必要です。
カリウムはトマト・バナナ・じゃがいもに、マグネシウムは豆類や海藻、ナッツなどに多く含まれています。
特に夏野菜や果物は水分も豊富なので、熱中症対策にもぴったりです。
味噌汁に豆腐とわかめを入れるなど、日々の食事に自然と取り入れることができます。
高齢者におすすめの夏バテ対策食べ物10選

夏バテで食欲が落ちがちな高齢者でも、食べやすくて栄養がしっかりとれる食品を選ぶことが大切です。
ここでは、特におすすめしたい食べ物を10種類紹介します。
冷やし茶碗蒸し|たんぱく質と水分補給を両立
茶碗蒸しは卵を使ったやわらかい料理で、高齢者にも食べやすく、たんぱく質がしっかりとれます。
冷やして食べれば、暑い夏でも口当たりがよく、のどごしもなめらか。
水分も多く含まれているので、水分補給にもぴったりです。
トマト・きゅうり|体を冷やす夏野菜
トマトやきゅうりは、水分がたっぷりの夏野菜です。
体の中の熱をやわらげ、ほてりを抑える効果があるといわれています。
ビタミンCやカリウムも豊富なので、サラダにしたり、そのままスライスして食べたりすると、食欲がなくてもさっぱり食べられます。
うなぎ|スタミナと栄養の宝庫
夏といえばうなぎ。うなぎには、ビタミンA・B群、D、Eなどのビタミン類が豊富に含まれています。
特にビタミンB1は疲労回復に効果的。
脂がのっているので、食べやすく刻んでご飯に混ぜたり、小さめの量で提供するのがコツです。
そうめん+野菜+たまごで簡単栄養バランス
そうめんはのどごしがよく、暑い夏でも食べやすい食事の代表格。
ただし、そうめんだけでは栄養が足りません。
野菜やたまご、ささみなどのたんぱく質をトッピングして、栄養バランスを整えましょう。
豆腐・納豆|高たんぱくで消化にやさしい
豆腐や納豆は、消化にやさしくて栄養もたっぷり。
たんぱく質をしっかり補えるだけでなく、納豆はビタミンKや食物繊維もとれます。
冷ややっこや納豆ご飯など、手軽に食べられるのもポイントです。
ヨーグルト|腸内環境を整えて免疫力UP
ヨーグルトには乳酸菌が含まれていて、腸の調子を整えてくれます。
冷たくて食べやすいので、デザート感覚で楽しめます。
プレーンタイプに、バナナやはちみつを加えると、甘みもあって栄養価もアップします。
味噌汁|ミネラル・水分・塩分補給に最適
熱い味噌汁は夏にあまり食べたくないかもしれませんが、実は汗で失われたミネラルや塩分を補うのにとても役立ちます。
具だくさんにして、豆腐、わかめ、野菜などを入れると、1杯で栄養満点。
ぬるめにして飲むのもおすすめです。
スイカ|水分補給と利尿作用でむくみ防止
スイカは90%以上が水分で、暑い夏の水分補給にぴったり。
カリウムも含まれており、体の中の余分な塩分や水分を外に出してくれる働きがあります。
甘みもあるので、食欲がないときにも楽しめる果物です。
豚しゃぶサラダ|冷たくて食べやすい
豚肉には疲労回復を助けるビタミンB1が豊富です。
しゃぶしゃぶして冷たく冷やし、野菜と一緒にサラダにすれば、暑い日でもさっぱりと食べられます。
ポン酢やごまダレで風味を変えて飽きずに食べられます。
ゼリー・プリン|甘味で食欲促進&水分補給にも
食欲がないとき、甘いデザートは「ちょっとなら食べたい」と感じやすいもの。
ゼリーやプリンは水分を多く含み、のどごしも良いので、高齢者にとっても安心して楽しめます。
市販のものでもよいですが、手作りすれば甘さや柔らかさの調整も可能です。
調理や食べ方の工夫で、もっと食べやすく!

高齢者が夏バテしやすいのは、食欲が落ちるだけでなく、噛む力や飲み込む力が弱くなっていることも原因です。
そこで、調理法や食べるタイミングを少し工夫することで、「食べたい!」と思えるようにサポートしていきましょう。
見た目・彩りを工夫して「食欲アップ」
人は、食べ物の見た目でも「おいしそう」「食べたい」と感じます。
色とりどりの野菜や果物を使って、食卓を明るくすることで、食欲もわいてきます。
たとえば、トマトの赤、きゅうりの緑、にんじんのオレンジなど、カラフルな食材を少しずつ使うと、それだけで元気が出るような食卓になります。
お皿や盛り付け方を工夫するのも、食欲を引き出すポイントです。
「やわらかさ」「飲み込みやすさ」を重視した調理法
高齢になると、噛む力や飲み込む力が弱くなり、固いものやパサついた食べ物は食べにくく感じてしまいます。
そこで、煮る・蒸す・とろみをつけるといった調理方法がおすすめです。
たとえば、鶏肉は焼くよりも「蒸し鶏」にした方がしっとりして食べやすくなります。
また、汁気のある料理や具材を細かく切るなど、のどごしがよくなるように工夫することで、無理なく食事を楽しむことができます。
1日3回でなく「小分け」にして無理なく食べる
「朝・昼・晩としっかり食べなきゃ」と思っても、暑さで一度にたくさん食べるのがつらいこともあります。
そんなときは、1日3回にこだわらず、小分けにして4回、5回と分けて食べてもOKです。
たとえば、「朝はヨーグルトだけ」「10時にバナナ」「昼に軽めの麺料理」など、自分のペースに合わせて食べれば、体への負担も減ります。
少しずつでも栄養をとることで、体はしっかりエネルギーを補給できます。
冷たすぎる食事は注意!温冷バランスの工夫
夏は冷たい飲み物や冷たい料理が食べたくなりますが、冷たいものばかりだと胃腸が冷えて働きが悪くなってしまいます。
そこで、「冷たい食べ物」と「温かい汁物」などを組み合わせて、体を冷やしすぎないようにしましょう。
たとえば、冷やしうどんには温かいお吸い物や味噌汁を添えるとバランスがとれます。
温冷のバランスを意識することで、胃腸をいたわりながらおいしく食べることができます。
避けたい!高齢者の夏にNGな食べ物とは?

夏はついつい冷たくて食べやすいものや、味の濃いものに手が伸びがちですが、高齢者にとっては注意が必要な食べ物もあります。
ここでは、夏バテを悪化させたり、体調を崩したりしやすいNG食材・食品を紹介します。
塩分・糖分が過剰な加工食品
ウインナー、ハム、漬物、インスタント食品などの加工食品は、塩分や糖分が多く含まれています。
こうした食品は食べやすくて便利ですが、毎日のように食べていると血圧が上がったり、体の水分バランスが崩れたりしてしまいます。
また、糖分のとりすぎは夏太りの原因にも。
特に高齢者は腎臓や心臓への負担が心配です。
味の濃いものはほどほどにして、できるだけ手作りの薄味メニューを心がけましょう。
食中毒リスクのある生もの
夏は気温と湿度が高く、食べ物が腐りやすい季節です。
お刺身、生卵、ナマモノ系の寿司などは、体力の落ちている高齢者には特にリスクが高いです。
調理後はすぐに食べる、冷蔵保存を徹底するなどの対策も大切ですが、体調に不安があるときは、生よりもしっかり加熱されたものを選ぶようにしましょう。
「見た目やにおいでは分からない」食中毒菌も多いので、慎重すぎるくらいがちょうど良いのです。
冷たすぎる・辛すぎる食べ物の落とし穴
暑いと冷たいかき氷やアイスクリーム、冷やし中華ばかり食べたくなるものです。
また、ピリ辛のキムチやカレーで食欲を刺激しようとする方もいるかもしれません。
しかし、冷たすぎる食べ物は胃腸の働きを弱めてしまい、結果的に栄養がうまく吸収できなくなります。
逆に辛すぎる食べ物は、胃に負担をかけたり、体を余計に疲れさせてしまうこともあります。
「少し冷たいものを食べたら、次は温かい汁物を」など、バランスをとる意識が大切です。
【1週間分】高齢者向け|夏バテ予防の献立例

ここでは、夏バテを予防しながら、食べやすさと栄養バランスを両立した「1週間の献立例」を朝・昼・夕の3食に分けてご提案します。
食欲がない日でも「これなら食べられそう」と思えるようなやさしいメニューを中心に構成しています。
月曜日
- 朝食:バナナヨーグルト/トースト/牛乳
- 昼食:冷やしうどん(卵・オクラ・とろろ入り)/ミニトマト
- 夕食:鶏肉と夏野菜の煮物/冷ややっこ/ごはん/味噌汁(わかめと豆腐)
火曜日
- 朝食:おかゆ/焼き鮭ほぐし/ほうれん草の胡麻和え
- 昼食:そうめん(豚しゃぶ・きゅうり・卵トッピング)/冷やし茶碗蒸し
- 夕食:豆腐ハンバーグ/かぼちゃの煮物/ごはん/味噌汁(なすと油揚げ)
水曜日
- 朝食:フルーツゼリー/小さなロールパン/スープ(かぶ・にんじん)
- 昼食:五目おにぎり/卵焼き/きんぴらごぼう/お吸い物
- 夕食:サバの味噌煮/冷しゃぶサラダ/ごはん/味噌汁(大根とにら)
木曜日
- 朝食:野菜スムージー(小松菜・バナナ・豆乳)/ゆで卵
- 昼食:冷製パスタ(ツナとトマト)/野菜スープ
- 夕食:うなぎ丼(刻みうなぎ)/きゅうりとワカメの酢の物/味噌汁(玉ねぎ)
金曜日
- 朝食:ホットケーキ(少量のはちみつ)/りんごのコンポート/牛乳
- 昼食:雑炊(鶏肉・たまご・青ねぎ)/ひじきの煮物
- 夕食:カレイの煮つけ/かぼちゃサラダ/ごはん/味噌汁(しじみ)
土曜日
- 朝食:バナナとヨーグルトのはちみつがけ/全粒粉パン/麦茶
- 昼食:ちらし寿司(さけ・たまご・いんげん)/味噌汁(豆腐とみょうが)
- 夕食:豚しゃぶのゴマだれ/冷やしトマト/ごはん/わかめスープ
日曜日
- 朝食:たまごサンド/キウイ/味噌汁(キャベツ)
- 昼食:にゅうめん(温かいそうめん)/なすの煮びたし/きゅうりの梅和え
- 夕食:白身魚のホイル焼き/枝豆/ごはん/味噌汁(もやしとにら)
補足ポイント
- 食欲がない日は「一口だけ」「ゼリーやスープだけ」でもOK
- 麦茶やスポーツドリンクで水分補給を忘れずに
- 少量ずつ何度かに分けて食べる「分食スタイル」もおすすめ
まとめ|“食べられない”を“食べたい”に変える工夫を

夏の暑さは、高齢者にとって体力・食欲の両面で大きな負担となります。
しかし、ちょっとした食材選びや調理の工夫、食事のタイミングを変えるだけで、夏バテを防ぎ、元気に過ごすことができます。
体の中から夏を乗り切るサポートを
夏バテ対策の基本は、「栄養バランス」と「水分補給」です。
冷たいものばかりに偏らず、たんぱく質やビタミン、ミネラルをしっかりとることが、元気な毎日を支えるポイントになります。
また、冷たい料理には温かいスープを添える、やわらかく調理する、色どりを工夫するなど、小さなことでも体にやさしく、心も満たされる食事になります。
毎日の「食べる」が健康のカギ
「なんとなく食べたくない…」という日もあるかもしれませんが、少しずつでも食事をとることで、体力を保つことができます。
ゼリーやスープなど、口当たりのよいものから始めるのも立派な夏バテ対策です。
特に高齢者の場合、1日3回にこだわらず、小分けで何度かに分けて食べる「分食スタイル」もおすすめです。
自分のペースを大切にしましょう。
家族のサポートと声かけが何よりの対策
高齢者の夏バテは、周囲の人の気づきとサポートによって、早めに対処することができます。
「最近食欲ないみたい」「水分はちゃんととってる?」といった声かけや、好みに合わせた食事の用意が、安心感にもつながります。
何を食べるかも大切ですが、「誰と食べるか」「どんな雰囲気で食べるか」も、食欲に大きく影響します。
温かい心配りが、なによりの元気のもとになるのです。
最後にひとこと
「食べられない」から「食べたい」へ。
高齢者の夏バテ対策は、無理をせず、やさしく寄り添うことが大切です。
この夏も、毎日の食事で笑顔と健康を支えていきましょう。